2026年、企業のAI活用はどこまで来たか——NexTech Week出展レポート

2026年4月、東京ビッグサイトで開催された「NexTech Week 2026【春】」では、10周年を迎えたAI・人工知能EXPOを中心に3日間で33,612名が来場し、クオンティアもブース出展して多くの来場者と対話を重ねた。本記事は、3日間で見えた企業のAI活用のリアルである。
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坂井 僚介
RYOSUKE SAKAI
Tech Ignitionセクター長
大手コンサルティングファームで大規模システム開発・金融BPR・要件定義に従事した後、中堅コンサルティングファームにて官公庁基幹システムのリバースエンジニアリングおよび構想策定を担当。現在はTech Ignitionセクター長として、生成AI・セキュリティ領域を中心にセクター運営を担う。
大手コンサルティングファームで大規模システム開発・金融BPR・要件定義に従事した後、中堅コンサルティングファームにて官公庁基幹システムのリバースエンジニアリングおよび構想策定を担当。現在はTech Ignitionセクター長として、生成AI・セキュリティ領域を中心にセクター運営を担う。
展示会の概要と、クオンティアが出展した理由
2026年4月15日から17日までの3日間、東京ビッグサイトで開催されたNexTech Week 2026【春】は、第10回となるAI・人工知能EXPOを中心に、ブロックチェーンEXPO、量子コンピューティングEXPO、AI時代の人材・組織改革EXPO、そして初開催のヒューマノイドロボットEXPOを含む構成展で展開された。フォーカステーマは「AX(AI Transformation)」。AI導入支援から一歩進み、人とAIが共に進化する次の段階を打ち出している。
出展企業の領域は、生成AIやAIエージェントといったソフトウェアから、現場業務を担うフィジカルAI、人材育成・組織変革まで幅広い。3日間の来場者は33,612名にのぼり、業種別では製造業が32.0%、通信・ITが25.8%、従業員1,001名以上の企業が43.3%を占めた。
クオンティアは本展にブース出展し、3日間で多くの来場者と対話した。狙いは展示の訴求ではなく、「企業がAI活用のどこで立ち止まっているか」を現場で直接聞くこと。その現在地は、3日間の対話を通じて鮮明に見えてきた。
ブース来訪者はどんな人たちだったか

3日間でクオンティアのブースに立ち寄った来場者の顔ぶれは、AI活用を本格的に検討する大企業層が中核を成していた。業種ではIT・SIerが最も多く、製造業がそれに続く。商社、建設、通信メディアといった重厚な業界に加え、大学・研究機関や医療機関など公共セクターからの来訪も一定数あった。中堅企業の来訪も見られたが、来訪者の重心は明らかに、複数事業や複数拠点を抱える大規模組織側にあった。
所属部署を見ると、技術・開発・R&D部門が最も多く、次いでIT・情報システム部門が並ぶ。現場の実装に関わる層が、新しい技術の見極めにこの場を活用していたことが分かる。一方で、経営企画やAI・DX推進といった、全社的な変革を構想する立場の来訪者も一定数存在した。役職の記載がない来訪者も多いが、記載がある範囲では実務担当層から管理職層まで幅広く分布した。
つまり来訪者は、「AIを現場で動かす人」と「AIで組織を動かそうとする人」の双方が交錯する層だった。次節以降では、彼らが何に関心を寄せ、どのような問いを残していったかを見ていく。
クオンティアのブースで反応があったこと——関心ポイントとよく出た質問

3日間の対話で、クオンティアのブースに集まった来場者の関心は、いくつかの明確なキーワードに収斂した。最も反応が大きかったのは「AI駆動開発」と「AIコンサル」、そしてこれに付随する「伴走型コンサル」である。特に「伴走」というキーワードに引き寄せられて足を止めた来場者は少なくなかった。
来場者から繰り返し投げかけられた問いは、5つに整理できる。それぞれ性質の異なる2グループに分けられる。
サービス仕様への問い
1. 使っているAIは自社開発か、市販品か(ほぼ全員から)
2. 料金体系はどうなっているか
3. AIは何を使っているか
自社の運用課題への問い
4. 社内にAIをどう普及させているか
5. 属人化したナレッジ共有をどう実現しているか
後者は、サービスの仕様ではなく、自社の運用課題への解決ヒントを探る色合いが濃かった。
来場目的を尋ねると、その多くが「情報収集」と答えた。明確な課題を抱えてベンダーを比較しに来た来場者は、むしろ少数派である。「上層部からAIを使えと言われたが何から始めればよいか分からない」「展示を巡りながら自社に適用できそうな何かを探している」——そうした漠然とした問題意識を抱えた来場者が、想像以上に多かった。
つまり、来訪者の関心は技術スペックよりも「どう社内に定着させるか」「誰が伴走してくれるか」に向いていた。これは、AIをめぐる企業の現在地を示す、極めて重要なシグナルである。
会話から見えた「AI活用の現在地」——共通する悩みとボトルネック

対話を重ねるうちに、企業のAI活用の現在地が輪郭を持って見えてきた。導入フェーズで言えば、「情報収集中」と「一部導入」が来訪者の大半を占めていた。個人レベルで本格的に使いこなす担当者はいるものの、組織として導入できている企業はほとんどない。Copilotのような汎用ツールが配備されていても、「使う文化がない」という状態が多数派である。ツールは入った、しかし誰も使わない——それが現在地の率直な姿である。
そして、来訪者の悩みは大きく3つの類型に分けられた。
1. 何にAIを適用すべきか分からない
最も多かったのは、何にAIを適用すべきか具体策が描けない、というそもそも論である。「上層部からAIを使えと言われた」「漠然とAI活用を進めなければと指示を受けているが、領域や課題感が具体化されていない」——そうした、ボトルネックを認識する手前の段階で立ち止まっている来訪者が目立った。AIで何ができるかは何となく分かっても、自社のどの業務にどう当てはめるかが描けない。
2. 導入したが使いこなせていない
ツールは入っているが組織として動けていない、という声も多かった。個人ベースでは生成AIを活用しているが、会社全体で見ると活用度合いに大きなばらつきがある。組織内のAIリテラシー差を平準化したい、業務にどう適用するかが分からない——そうした、導入後の壁にぶつかる企業が多数を占めた。書類作成のような従来業務がAIに代替され始め、「これまで作業していた人をどう扱うか」という新たな悩みも生まれている。
3. 経営と現場のギャップ
経営層から「AIを使え」と号令がかかるものの、現場は何から始めればよいか分からず困惑する。属人化したナレッジ共有も、社内変革を阻む根底の問題として浮上した。経営層は変革の必要性を理解していても、現場に降ろす段階で具体化が止まる。経営層と現場の温度差は、想像以上に大きい。
この3類型を貫いているのは、予算や技術の問題ではない。「最初の一手が打てない」「組織として動けない」という、構造的な詰まりこそが、企業AI活用の本質的なボトルネックである。
加えて指摘しておきたいのが、セキュリティ・ガバナンス要件への関心が、複数の来訪者から寄せられたことである。「セキュリティはどう担保しているか」「ガバナンスはどうしているか」といった問いが、大企業や規制業種の来訪者から繰り返し出ており、要件整備が追いつかないために、技術的には可能でも検討段階で止まっている企業も少なくないように見受けられた。これは3類型の構造的詰まりとも重なる、もう一つの本質的な論点である。
クオンティアの見立て——この来訪者層・温度感が示すこと

3日間の対話を経て見えてきたのは、いまの企業のAI活用が「導入したい」フェーズではなく、「どう使えばいいか分からない」フェーズに留まっているという事実である。だからこそ、来訪者の関心は技術スペックや料金よりも、「伴走型」「現場重視」「オンサイト支援」といった、共に走ってくれる存在への期待に集中した。
特に印象的だったのは、「失敗したくない」「実績があるところがいい」という声が複数の来訪者から聞かれたことである。新技術への期待よりも、慎重さが上回る。これは、AIをめぐる経営判断の重さが、いま現場の担当者層にも実感を伴って降りてきている証左である。一方で「取引先の小さい企業にも、低コストでシステムを入れたい」「みんながSaaSを作れるようにしたい」という、自社にとどまらず周囲にAI活用を広げたいというニーズも複数寄せられた。
会期中、印象に残るやり取りがあった。ある経営層の来場者が「部下や社員がAIを使ってくれない」とこぼした際、筆者はこう切り返した。まずご自身が仕事の仕方を変えること。次に、AIを積極的に使おうと努力している社員を正しく評価する人事制度を、セットで整えること。トップである経営者自らが先陣を切って組織を動かさなければ、AI活用は浸透しない——そう静かに伝えると、その経営者は「そうだよね」と納得した様子で頷いた。
AI活用の本質は、ツールの導入ではなく、トップの姿勢と文化づくりにある。同じ課題に向き合いたい人にとって、クオンティアの3日間が小さな道しるべになれば幸いである。